真っ赤な金魚
女子大生A さんからの投稿
高校生の頃、SNSで知り合った人がいた。
初めて会ったとき、ドキドキが止まらなくて、初めて一目惚れをした。恋人がいるのは知っていた。知っていて好きになった。
その人は写真を撮るのが趣味で、レンズを覗く横顔を見ているのが好きだった。
あるとき、金魚の展覧会に誘われた。展覧会へ行く前にカフェに連れて行ってくれた。
わたしと同じ名前のカフェだった。
「一緒に来たいと思ってた。」
恥ずかしいような、嬉しいような、少し泣きそうになった。
展覧会に向かうバスの途中、そっと手を握られた。
わたしはまた泣きそうになった。
ライトに照らされた真っ赤な金魚は、宝石みたいで夢中になった。
ふと横を見ると、カメラがこっちに向いていた。
「金魚撮りに来たんじゃないの。」
と照れ隠しで言うと、
「金魚よりこっちのほうがきらきらしてた。」
と言われた。
忘れられない夜だった。
その人とはそれきりで、わたしから疎遠になった。いまはもう、何も知らない。
あれからずいぶん経ったけど、たまに思い出しては、あの人が撮った金魚の写真を見ておけば良かったなと後悔する。
きっと、あのときのわたしの気持ちみたいに、真っ赤できらきらしていたはず。
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